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  • ryomavet
  • 4月29日

腫瘍の治療には大きな三本柱があります。


☆外科治療(手術)

☆化学療法(抗がん剤)

☆放射線療法          の三つです。


もちろん、これ以外にも様々な治療法がありますが、この三つが基本になります。

このうち、今回は外科治療(手術)についてお話します。


外科治療は、腫瘍の治療において第一選択になることが多い治療です。

多くは高齢で、体力が落ちていることが多い腫瘍患者に対して、麻酔をかけなければならないというデメリットはありますが、一度に多くの腫瘍組織を取り除くことができるというメリットがあります。


腫瘍の種類によっては、早期発見・早期治療によって、部分的には再発もなく、ほぼ完治に近い状態に持っていけることもあります。


外科治療は、すでに肺などに転移がある、手術に耐えるだけの体力がないなどの状態の時には基本的には適応にはなりません。


ですが、たとえば四肢の骨肉腫などでは、激しい痛みが出ますので、肺に転移があっても、その痛みを少しでも軽減するという目的のために手術を行うことがあります。


腫瘍の場所や大きさが手術での摘出が困難な場合に、抗がん剤治療や放射線治療を前もって行い、腫瘍のサイズ・範囲を縮小させてから手術を行うということもあります。


実際の例をご覧いただこうと思います。

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犬の下顎の歯肉に出来た腫瘍です。

細胞診によって悪性の腫瘍が疑われたため、摘出を行いました。

このような歯肉の腫瘍で悪性が疑われる場合には、腫瘍を中心に吻側・尾側の正常歯肉・下顎骨も含めて一括で切除を行います。

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摘出した組織と術後の下顎の様子です。

腫瘍のサイズや場所によって、このように部分的に摘出したり、片側の下顎骨を全部摘出するようなこともあります。

  • ryomavet
  • 4月29日

悪性の乳腺腫瘍
悪性の乳腺腫瘍

さて、今度こそ実際の診療の流れに入っていきたいと思います。


まず、体の表面に何かしこりができた場合には、飼い主様が「うちの子に何かしこりができたんです。」と来院されます。


それは、皮膚などにできていることで、見てわかるしこりです。

そういう場合には、まず、どこにどんなものができているのかを確認します。

それと同時に、その犬・猫の種類、年齢、既往歴、現在の体調などを確認します。

皮膚にしこりがあるからといって、そこだけにあるとは限らないので、全身をチェックします。


場合によっては、体の中の腫瘍の転移として皮膚に出ていることもあります。

そのような場合には、体調も落ちていることなどが多いですので、血液検査やレントゲン検査などで詳しく調べていきます。


体調などに特に問題がない場合には、そのしこり自体にアプローチをしていきます。

まず行うのが細胞診という検査です。

腫瘍に直接針を刺して細胞を採取します
腫瘍に直接針を刺して細胞を採取します

これは人間でもよく行われている検査ですが、細い針で腫瘍の細胞を取り出し検査します。

痛みは少なく、麻酔なども必要ない最も簡単な検査です。


この検査において最も重要なことは、そのしこりが、腫瘍なのか炎症なのかを鑑別することです。そして、腫瘍であることが疑われた場合には、良性と悪性のどちらが疑われるのかを見分けていきます。


細胞診検査でできることはここまでです。

ただし、腫瘍の種類によってはこの検査で診断できることもあります。

しかし、多くは診断まではできませんから、腫瘍が疑われた場合には、特に悪性のものが疑われた場合には、もう一歩踏み込んで検査をしていきます。

というのも、悪性であった場合に、腫瘍の種類によって手術で摘出を考えた時に

しこりの周りをどのくらいの範囲で摘出すればよいかの判断が異なるからです。


より適切な手術を行うためにもより確かな診断が必要となります。

細胞診の次の検査としては、より多くの組織をとっての病理組織検査となります。

腫瘍の状態によって、結紮離断(しこりの一部分もしくは根元を糸で結んで切り取る)や

トゥルーカットバイオプシーなどがあります。

細胞診の時よりも太い針を刺入し、より大きな細胞塊を採取します
細胞診の時よりも太い針を刺入し、より大きな細胞塊を採取します

その検査によって腫瘍の種類を絞り込んで、手術や抗がん剤投与、放射線照射などの治療に入っていきます。

次回は、腫瘍の治療法についてお話していきたいと思います。

  • ryomavet
  • 4月29日



今回から、実際に腫瘍診療をしていくに当たって、どのような流れで診療していくことが多いかをお話していきたいと思います。

今回はまず、「がん」って何?という話からしていきたいと思います。


もともと私たち人間を含めた動物は、細胞からできています。

その細胞は、正常な状態では、必要に応じて、細胞が分裂して増殖していきます。

それに対して、細胞が、自己制御を失い異常に増殖していくのが、「がん(悪性腫瘍)」という病気です。

自己制御を失った細胞は、勝手に組織を作っていくので、しこりができるわけです。

このしこりを腫瘍といいます。

腫瘍は、良性と悪性に分けられ、悪性腫瘍のことを「がん」とよびます。

良性腫瘍は、ほとんどの場合、命に関わるような害はなく、切除してしまえば再発や転移することはありません。

とはいえ、良性の腫瘍であっても、場所によっては、大きくなって歩行障害が出ることや、

お腹の中にできたものでは、他の臓器を圧迫して症状を出すこともあります。


悪性腫瘍の場合は、切除しても再発や転移することがあります。

悪性腫瘍は急激に大きくなるもの、ゆっくりと活動するものとがあり、場所や腫瘍の種類によっては症状も様々です。

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