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  • ryomavet
  • 18 時間前



実際の治療では、今までにお話した三つの方法、

☆外科療法(手術)

☆化学療法(抗がん剤)

☆放射線療法

を組み合わせて治療を行なっていきます。


腫瘍の種類によって効果的な治療も異なるためです。

最もよく行われるのは、体にできた腫瘍を手術で摘出し、その後の再発・転移を抑える目的での抗がん剤の投与です。


上記の三大療法が腫瘍治療のメインであることはゆるぎないですが、

実際の臨床現場では往々にしてそのどれも選べない時もあります。


・すでに肺などに転移が認められる場合

・肝臓や腎臓に機能低下が認められ、麻酔や抗がん剤の投与が難しい場合

・高齢であることなどを理由にご家族が手術や麻酔を受け入れられない場合   等です。


このような例は最近増えており、当院では三大療法以外の方法をご家族にご提示しています。


まずは、半導体レーザーを用いた腫瘍の蒸散・切除やレーザーサーミア(局所凝固治療)をご紹介します。


半導体レーザーを用いて、麻酔がかけられない例などに、局所麻酔もしくは無麻酔にて腫瘍の切除が可能です。口腔内など腫瘍の場所によっては全身麻酔が必要となりますが、手術よりも短時間で処置が終了するため、比較的適応できる例は多いです。


また、切除は難しい腫瘍でも、レーザーファイバーを腫瘍内に差し込み、腫瘍組織を熱によって凝固・壊死・脱落させることで腫瘍を縮小させます。この治療も局所麻酔のみで可能です。完全に腫瘍が除去できるわけではないので、しばらくすると再発してくるのですが、しばらく時間を稼げます。うまくいくと、その子が天寿を全うするまで、腫瘍を許容範囲内に抑えることもできます。


それ以外ですと、最近はよくアニミューンというサプリメントの投与を行っています。

アニミューン®はフアイアというキノコに含まれる「糖鎖TPG-1」を主要成分とする糖鎖サプリメントです。

様々な機序から免疫調整作用を持ち、免疫を中庸に保つとされています。

免疫は低下することにより腫瘍疾患や感染症になりやすくなり、また過剰に反応することでアレルギー疾患や自己免疫疾患を引き起こします。

アニミューンによってその免疫が中庸になり本来果たすべき働きを果たしてくれるようになります。

腫瘍例であれば、腫瘍の再発の抑制や悪化抑制をすることが期待できます。


三大療法を選択することが難しい場合でも、なにかしら出来ることはあります。

お困りの方はいつでも当院にご相談ください。

  • ryomavet
  • 19 時間前

今回は、治療の三本柱の最後、放射線治療のお話です。


放射線治療は動物の世界ではまだまだ人間ほど行われておりません。

その理由としては、装置自体が非常に高価なこと(数億単位の世界です。。。)

そのため、装置が設置されている施設が全国的にも少ないこと。


装置の取り扱いに「第一種放射線取扱主任者」という国家資格の取得が必要。(獣医師とは別に)


そして、人間との最も大きな違いは、

動物は放射線治療のために麻酔をかけなければならないということです。

人間であれば動かないようにしておいてもらえばいいのでしょうが、動物はそういうわけにはいきません。


全身麻酔をかけて、しっかり動かないように維持しながらの照射となります。

その麻酔がネックとなってきます。

というのも、放射線治療は通常複数回の照射を行います。

少なくても週1回、多い方法の場合は週3~5回を4週ほど行うことが多いです。


そのたびに全身麻酔をかけるわけですから、患者さんの負担は大きいものとなります。

しかし、手術などで取りきれない場所、手術自体不可能な場所・大きさの腫瘍などには

選択肢の一つとして大きなウェイトを占めます。


放射線治療をすることにより、腫瘍が縮小し、手術が可能になるという例もあります。

その逆で、手術後に術創周囲に残っている小さな腫瘍細胞を殺して、再発までの時間稼ぎをするために照射を行うということもあります。


放射線治療の副作用としては、放射線障害があります。

照射部位の脱毛や色素沈着、ひどい場合には皮膚や骨の壊死などもあります。

これらの副作用は照射した放射線の線量に依存することが多く(違う機序もありますが)

副作用と治療効果を天秤にかけて、これまたギリギリのところで調節をしていきます。


ですが、抗がん剤にあまり反応しない腫瘍で手術不可能だった場合に

昔なら諦めてしまっていたものでも治療できるようになったという点では治療の選択肢が広がりました。


当院では放射線治療が適応となる例に関しては、適切な時期に、二次診療施設をご紹介しております。


  • ryomavet
  • 19 時間前

今回は、化学療法(抗がん剤)についてです。


多くの方は抗がん剤と聞くと、ちょっと怖いイメージを持っているかと思います。

確かに、抗がん剤の種類や特性をよく理解していないと、怖い薬ではあります。

また、人間では激しい吐き気や毛が抜けたりなどの副作用なども良く知られていることと思います。しかし、そのような副作用が出ることは実際には皆さんが思っているよりも少ないです。


テレビなどでよく無菌室に入って抗がん剤治療を受けている患者さんが出てきたりしますが、多くは白血病の患者さんかと思います。

白血病の治療には人間では、強力な抗がん剤治療を行い、骨髄の腫瘍細胞を正常な細胞もろとも完全に壊してゼロの状態にして骨髄移植を行うなどがあります。

骨髄移植をするには拒絶反応を抑えるために患者さんの骨髄の細胞を全て壊す必要があります。

全て壊すということは、骨髄移植をしてうまくその骨髄が正常な白血球や赤血球などを作り出して、感染に対応できるようになるまで、外からの感染を抑えないといけません。

そのための無菌室です。


また、そこまで細胞を壊すほどの抗がん剤治療ですから、当然、その他の正常な部位の細胞も破壊して、吐き気や下痢、毛が抜けたりなどの強い副作用も出るわけです。


動物の世界ではそこまでの強い抗がん剤治療は通常行いません。

無菌室がある動物病院はおそらくないと思いますし、骨髄移植も人間でも不足している現状ですから、動物の世界では言わずもがなです。


そもそもその技術が確立していません。


動物の世界で行われている抗がん剤治療は、あくまで手術後の局所再発や転移をできるだけ抑えていこうという治療になります。


できるだけ、元気に過ごせる期間を延ばそうとする治療ですから、その治療で副作用が強く出ては意味がありません。


ですから、治療に使う抗がん剤の量なども人間に比べたらだいぶ制限されたものとなっています。

ただし、量を制限すればするほど、副作用はもちろんほとんど起きなくなりますが、肝心の効果がどんどんうすれていくということになります。

ですので、実際には、患者さんの体調を見極めながら、副作用が強く出ないギリギリのところで、最大の効果が出るように調節しながらの治療となります。


具体的には、抗がん剤投与の前に血液検査をし、肝機能・腎機能などのチェック、白血球・血小板の数、貧血の有無などを調べて異常がないことを確認した上で抗がん剤を投与します。


このような検査を行う理由として、抗がん剤も薬ですので、肝臓や腎臓から排出されます。

そのため、肝臓や腎臓に異常があるとうまく抗がん剤が排出されずに、通常より長く体に留まることになり、副作用が強く出ます。


また、投与後に白血球や血小板の数が減少することが多いので、十分な数があるかを確認します。減りすぎると二次感染を起こす可能性が高くなり、そのような状態で感染を引き起こすと、敗血症などの状態を引き起こすためです。


抗がん剤投与によって減少した白血球や血小板は、投与後、間を空けることによって必ず回復します。


抗がん剤は投与した時だけ骨髄に作用し、肝臓や腎臓から排出された後は体には残らず

影響はなくなります。


ですので、投与した時期に骨髄にあった細胞だけが死んで、抗がん剤が体から抜けた後からまた新しい、細胞が増殖を始めるのです。


ですので、一時的に白血球などが少ない時期ができますが、その間、新しい白血球が増えてきて体を感染から守ってくれるようになるまでの間、二次感染を起こさないように抗生物質の投与を行います。


検査で異常が見つかった場合には、抗がん剤の投与量を減量するかもしくは投与を延期します。


使う抗がん剤の種類、数、期間は腫瘍の種類によって様々です。

同じ腫瘍の治療でも色々な方法があります。

患者さんの状態、飼い主様の価値観、病院の設備などにより様々なパターンが考えられます。当院ではできるだけ様々なパターンに対応できるようにしていきたいと考えています。

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