腫瘍診療の流れ⑥
- ryomavet
- 4月29日
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今回は、治療の三本柱の最後、放射線治療のお話です。
放射線治療は動物の世界ではまだまだ人間ほど行われておりません。
その理由としては、装置自体が非常に高価なこと(数億単位の世界です。。。)
そのため、装置が設置されている施設が全国的にも少ないこと。
装置の取り扱いに「第一種放射線取扱主任者」という国家資格の取得が必要。(獣医師とは別に)
そして、人間との最も大きな違いは、
動物は放射線治療のために麻酔をかけなければならないということです。
人間であれば動かないようにしておいてもらえばいいのでしょうが、動物はそういうわけにはいきません。
全身麻酔をかけて、しっかり動かないように維持しながらの照射となります。
その麻酔がネックとなってきます。
というのも、放射線治療は通常複数回の照射を行います。
少なくても週1回、多い方法の場合は週3~5回を4週ほど行うことが多いです。
そのたびに全身麻酔をかけるわけですから、患者さんの負担は大きいものとなります。
しかし、手術などで取りきれない場所、手術自体不可能な場所・大きさの腫瘍などには
選択肢の一つとして大きなウェイトを占めます。
放射線治療をすることにより、腫瘍が縮小し、手術が可能になるという例もあります。
その逆で、手術後に術創周囲に残っている小さな腫瘍細胞を殺して、再発までの時間稼ぎをするために照射を行うということもあります。
放射線治療の副作用としては、放射線障害があります。
照射部位の脱毛や色素沈着、ひどい場合には皮膚や骨の壊死などもあります。
これらの副作用は照射した放射線の線量に依存することが多く(違う機序もありますが)
副作用と治療効果を天秤にかけて、これまたギリギリのところで調節をしていきます。
ですが、抗がん剤にあまり反応しない腫瘍で手術不可能だった場合に
昔なら諦めてしまっていたものでも治療できるようになったという点では治療の選択肢が広がりました。
当院では放射線治療が適応となる例に関しては、適切な時期に、二次診療施設をご紹介しております。