代謝性骨疾患(MBD) of りょうま動物病院

代謝性骨疾患(MBD)

原因
<食事中のカルシウムの不足とリンの過剰>
自然界での爬虫類の食事はカルシウム:リンが平均1:1から2:1あるが、飼育下では逆転することが多く、時に1:40にもなる。
肉食性のカメでは骨成分を含まない精肉、ハム、ソーセージ、魚の切り身等やカルシウム:リン比の悪いコオロギ、ミルワームといった昆虫ばかり与えられることによる。
草食性のカメでは、通常カルシウム含量の多い葉野菜や雑草を主食として与えられるべきであるが、レタスやキュウリ、果物等といったカルシウムに乏しい食事が主になったり、動物質、植物質を問わず蛋白質を多給した場合に起こる。
<ビタミンD3の欠乏>
食事中のビタミンDの不足もしくは中波長紫外線(UVB)の照射不足
動物質の食事にはビタミンDが含まれていることが多いが、植物質の食事には通常含まれていない。カメは、UVBの照射により、皮膚の分泌成分からビタミンD3を合成することができる。それ故にUVBに供給がされていない、草食性のカメに起こりやすい傾向がある。

症状
骨で構成されている甲羅に明瞭な障害を認めやすい。
リクガメでは背甲板の一つ一つがピラミッド状に変形したり、腹甲板に凹凸がみられることが多く、水棲ガメでは身体の成長に甲羅の成長が伴わないため、頭部・四肢等が甲羅内に入らない体形になったり、背甲の辺縁が反り返ったりすることが多い。また、陸棲・水棲ガメを問わず、甲羅が軟化することもある。
四肢の骨格の異常に伴い、歩行困難やうまく泳げなくなることがある。
顎骨の変形に伴う咬合不正から、嘴の変形(過長)等を生ずることもある。
二次性上皮小体機能亢進症を起こすと低カルシウム血症による食欲不振や活動性の低下、排泄がなくなる等の非特異的な症状やときにテタニーを生ずる。

予防
<カルシウム:リン比の正しい食事を与える>
草食性のカメにはコマツナ、チンゲン菜、大根の葉、モロヘイヤといった葉野菜を中心(食事全体の90%以上)に与える。
肉食性のカメには、食事となる生物丸ごとを与える。たとえば、小魚丸ごとや骨ごとミンチにしたものを適量与えるようにする。また、質の良いカメ用のペレットに餌付かせる。
一部のハコガメ等のように昆虫を好むものでは、できる限り自然の中で採集したてのものを与えたり、コオロギ、ミルワームといったカルシウム:リン比の悪い昆虫を与える際には、前もってこれらの昆虫をカルシウム含量の多いエサで飼育してから与えたり、昆虫にカルシウムの粉末をまぶしてから与えることでカルシウム:リン比が正しくなるように努める。
<日光浴もしくはUVBを含むフルスペクトル灯の照射>
最良なのは、自然光(太陽光)による日光浴であることは言うまでもなく、1日に30分から1時間程度、屋外に出すとよい。この場合の注意点は、熱射病に配慮し直射日光から身を隠す日陰を提供したり、高温になりすぎない場所や時間帯を選ぶことである。
フルスペクトル灯はいくつかのメーカーから多少組成の異なるものが販売されているが、ビタミンDを合成するためのUVB要求量が明らかにされていないのでどれを選択するべきか、また使用法と効果については不明確な部分が大きい。しかし、日光浴ができない環境では利用価値は高く、経験的に効果があると考えられている。通常60cm以内の高さから照射し、UVBの放射される寿命を2000時間までとして使用すれば有効とされている。また、紫外線の人体への悪影響を配慮すると人間用に開発された製品を使用する方が安全であろう。
ビタミンD3を含むフードや、栄養剤の使用には注意が必要である。ビタミンD3の過剰は転移性ミネラリゼーションを起こす可能性があり、潜在的に危険である。各種におけるビタミンD3の要求量は明らかにされていない。

治療
一般状態の悪くない患者の場合、予防の項の内容をすべて実行することで今後の進行を抑え、致死的な状況から救うことが可能である。しかし、変形した甲羅が整復することはない。
低カルシウム血症に陥っている患者の場合、通常一般状態が悪いため以下のような積極的な治療が必要である。
グルコン酸カルシウムの注射投与
強制給餌
患者は通常採食できない状態にあるため、栄養支持が不可欠である。
ビタミンDの注射投与

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